腹鼓記


 

 阿波の狸合戦の伝説をもとに書かれた長編小説。

 とうちゃんが徳島に就職することになったときに,大学の担当教授から「徳島に行くならこれを読んでから行け!」と一読することを勧められた。数年経ってから担当教授に勧めた本意を尋ねたところ,「阿波には昔からタヌキがたくさんいて,化かし合い,騙し合いしているので,じゅうぶんに気をつけろという意味だった」と言っていた。
 その時は妙に納得するほどに阿波の人のしたたかさが目に付いたが,10年以上の月日が過ぎて,ふと気がつくと今ではすっかり自分自身がタヌキの仲間入りをしているようで笑える。
 基本的に長編ものが嫌いでほとんど進んで読むことがなかったとうちゃんでも,ついつい夢中になって読んでしまったほどおもしろい内容である。
 徳島について何か知りたいと思っている人があれば,ぜひ一読をおすすめする一冊である。徳島県人の本質がわかるかも知れない。

(井上ひさし著 新潮文庫)

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